オランダのデンドルダーという田舎でアーティストインレジデンスを始めて3週間がたった。韓国生まれでオランダ人のフォトグラファー、エリカ・ブリクマンとの共同プロジェクトのため四十一緒に行動をしているので孤独ではないが、静けさのせいか環境の違いのせいか眠れない日が多い。アムステルダムに帰ってきても熟睡はできない。プロジェクトが始って緊張しているのであろう。そのかわりそんな眠れない夜には「創造の神」が枕元に降りてくる。そして朝まで会話をする。その会話から新しい作品のアイデア、発想力、想像力が生まれる。
このレジデンスは精神病棟敷地内にあり、アーティストは3か月住み込んで患者と制作をしたり、環境からインスピレーションを得て作品を作ったりする。私たちは患者とワークショップをして共同インスタレーションをする予定だが、今はコミュニケーションをとるためにいろんな行事に参加するようにしている。
今日はオランダのガーデンセラピーというものを体験した。患者とコミュニケーションをとるよう指導者が私たちに参加するよう誘ってくれたのだ。朝10時から11時半まで。ガーデニングは初めてだし患者と一緒に作業するのも初めてなので緊張しながら時間きっちりに庭で待機する。2人の若者と指導者がいる。まだ全員そろってないようなのでおしゃべりや散歩をしながら様子をみる。他のアシスタントであろう人が来たので自己紹介等をしながら様子をみる。コーヒーを入れはじめたので飲んで様子をみる。タバコは止めたので吸わないけど患者の吸っているのを眺めながら様子をみる。他の患者が来たのでおしゃべりをしながら様子をみるーーと、様子をみること1時間。残り30分という頃にアシスタントが庭作業をはじめる。待ってました!と思いながら道具の場所を聞いて自発的に作業をはじめたが、簡単な作業なのですぐに終わってしまう。自分のわかる範囲で作業を見つけてはじめるが時間がきて止めなければならなくなった。後から来た患者は庭作業はしてなかったようだけど先に帰ってしまった。
私だけでなくオランダ人のエリカも首をかしげる「セラピー」であった。
オランダで「ぬるい」と感じる事は沢山あるけど、病院内でもそのぬるさは浸透しているのだろうか?そのようにひとからげに解釈したくないので他の理由を考えてみる。一番いいシナリオは、オランダは患者に自発的な行動のみを求めている。なので庭作業をしたくない人はおしゃべりだけして帰ってもよい。時間内に来ただけでもかなり自発的だ。ひょっとしたら来なかった患者もいっぱいいるかもしれない、そうにちがいない!
そんななか、一人の若者ははじめから最後まで黙々と庭作業をして最後にタバコを一服して帰っていった。美しい姿である。