自分の死を決める

最近悲しい事があった。私たちの家の地上階に住むおばあちゃんのCさんが亡くなったのだ。83歳だった。

Cさんはずいぶん前に旦那様と死に別れてから一人で暮らしていた。彼女と喋るようになったのは私の子どもがお喋りできるようになってから。3人の子どもを育てたCさんは私たちのことをよく気にかけ声をかけてくれた。腰が悪くなり窓辺に座る事が多くなったCさんにとっても、子ども達が窓を覗いてくれるのが嬉しいようだった。同時にCさんの持ち物で子ども達が好きそうなものをどんどんくれるようになり、ひょっとして引っ越すのかな?と思う程身の回り品を処分していた。

やがてCさんは外に出歩く事もできなくなり、ヘルパーの人が訪問するようになった。ヘルパーの人が身の回りの世話をしてくれるのだが、私たちへの誕生日のお祝いもヘルパーの人に頼んで届けてくれていた。

私たちが夏休みのバケーションから帰ってくると、Cさんの窓はカーテンが閉まったままだった。娘さんのところに滞在しているのかもと思っていると、その娘さんから手紙が届いた。私たちが留守中に転倒して骨が折れ、そこからいろいろな感染が広がって食欲もない状態でアムステルダムのケアセンターにいるという。すぐに娘さんに連絡を取り子ども達を連れてお見舞いに行った。

娘さんから聞いたところ、Cさんはもう長く生きたので手術はしない事を決め、病院ではなくこのケアセンターに入ったようだ。が、日々容体が悪くなり痛みを和らげる為にモルヒネ投与をはじめていた。泊まり込みで付き添っていた娘さんは、Cさんが死を選んだ事を尊重し、ポジティブに受け止めようとしているようだった。私たちがお見舞いに行った時、Cさんは目を開けて子ども達が描いた絵をみてお礼を言ったが、それ以上喋る事はできなかった。

お見舞いに行った四時間後、娘さんからCさんが亡くなった知らせを受けた。

オランダに家族がいない私たちにとってはCさんは子ども達のオーマ(オランダ語のおばあちゃん)であった。葬儀には家族みんなで参列するにあたり、初めてのことなので何をどうしたらいいのかわからず知り合いに聞きまくった。しかし特に宗教にこだわらないCさんの葬儀は予想外に短かく簡潔だった。

オランダでは高齢の人に終末期医療を希望するか本人と確認し、ほとんどの人が希望しないそうだ、と後に新聞記事で知った。Cさんのようなオランダの葬儀はカジュアルでドライな印象を受けるかもしれないが、本人の意思が一番重要なので形式でしかない葬儀は重要でないのかもしれない、と理解した。もう窓を覗いて手を振ることができないと思うと本当に寂しいが、自分の最後を自分で決められるのは一番の幸せだろう。そしてそれを受け止めてくれるオランダ人と社会は素晴らしいと思う。

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自転車がなくなるの巻

10月28日、子ども達の学校が研修でお休みなので午前中からお出かけする事に決めた。電車で出かけるため午前11時頃、街乗り自転車に子ども二人をのせてアムステルダム中央駅に向かう。この時間帯は無料駐輪場も有料駐輪場もいっぱいなのは分かっているのでBakfietsで出かけるような事はしない。

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この自転車でも駐輪場のラックに入らないので、私の最近の方法は自転車ラックのすぐ横に自転車をおくことだった。ラックに収まらないからしょうがないけどちゃんと駐輪場に入れてるよという気持ちで。これで3回くらい同じ場所に自転車を置いているが他にやっている人もいるし問題があるように見えなかった.

CSa'dam でも、、、、なくなりました。電車から降りてP1がはじめに自転車に走っていったのだが「ママ〜自転車がない〜!」P1のこういう記憶力はいいので間違える筈はないし、私も同じ場所を見渡したけど、、、やはりない。自転車があった場所にもメッセージや持って行った痕も何もない。

市の機関に持って行かれたか泥棒に持って行かれたか困惑しながら、近くの駐輪場でアムスのFietsdepot(自転車保管所)の情報をもらい、その日は皆悲しい気持ちになりながらトラムで帰った。

アムステルダムの自転車保管所にメールや電話で問い合わせても私の自転車はないという。でも昼間に駅前で自転車が盗まれる筈はないと思い、とりあえず保管所に出かけてみる事にする。保管所ではID、自転車の鍵、あれば自分の自転車を証明する番号や保険の証明、10ユーロが必要なので、それらを用意する。82番のバスにのってWestpoortwegというところで降りると、他のほとんどの乗客も同じ停留所で降りたのには笑った。そして皆保管所へ歩いて向かっていった。

保管所では受付で自分の自転車のなくなった場所、日にちを伝えて向こうが管理している写真で自転車を確認する。電話でもメールでもないと言われた私の自転車はちゃんとここにあった!

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毎日250台の自転車が運ばれてくるという自転車保管所はやはり自転車だらけ〜!!!この中から自分の自転車のところに連れて行かれ、鍵が合うかを目の前で確認してやっと自転車を持って行く。ここでは2ヶ月自転車を保管してくれるので早めに引き取りにいくべし。10ユーロ払うと自転車を家まで届けてくれるサービスもあるそうだ。私が保管所に出かけていって帰ってくるまで2時間もかかってしまったので、それも悪くない。それでもここの60%の自転車は引き取られないままだそうだ。オランダに慣れていない人は自転車が盗られたと思って諦めるからだと思うけど。

オランダでは自転車の窃盗が多いので、自転車よりも高い自転車ロックを買い、ユニークな自転車に乗る事が窃盗を避けるポイントだ。そのため市では自転車に名前を彫る無料サービスも行っている。窃盗の場合オランダ最大のMarktplaatsという個人売買サイトに、盗まれた自分の自転車の情報をのせている人もいた。窃盗自転車の売買を防止するにはいいアイデアだ。

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こちらは廃棄自転車の行列。市は定期的に駐輪場から古い自転車を取り除いている。まず目立つオレンジ色のステッカーを自転車に貼って忠告し、1週間後に持って行ってしまうが、この自転車も取り戻す事はできる。

10ユーロと2時間の旅で自分の自転車が無事に帰ってくるのでオランダは良心的なほうだと思う。ただ我が家の高級自転車ロックは切られて使い物にならないけど。長く住んでいるオランダでのはじめての体験だったし、子ども達の社会学習にもなったのである意味楽しかったが、二度目は絶対避けたいものだ。